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目次  1.知的財産権 2.マルチメディア 3.最後に

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1.知的財産権(模倣・ただのりの禁止を意図している。)

 人類は工夫に工夫を重ね、模倣することにより発展してきた。ただで模倣をする事を禁じるべく、ある種の情報に独占的地位をあたえるのが知的財産法の趣旨である。

1−1 知的財産法の構成

       特許・実用新案権 技術上の発明・考案

       工業所有権 意匠権 商品の外観デザイン

       商標権      商品・役務のマーク(信用の保護)

 

知的財産権  著作権      文芸・学術(ゲームソフトも)・美術・音楽に関わる著作物

                

       回路配置利用権  半導体集積回路の素子と導線の配置

       営業秘密・ノウハウなど不正競争防止法上の権利  

       商号権      営業上の商人の名称

 

1−2 著作権法について

  著作物とは「人の思想や感情の滲み出ている創作的表現」である。

      即ち、人の創造的個性が見受けられた精神活動の表現である。

      

著作物の範囲   言語     小説、脚本、講演 、論文

         音楽     歌謡曲、ジャズ、交響曲

         舞踊・無言劇 パントマイムの振り付け

         美術     絵画、版画、彫刻、マンガ、活花

         建築      城、教会、塔、モニュメント、寺社

         図形     地図、学術的図面、図表、模型、機械の設計図

         映画     劇映画、ニュース映画

         写真

         二次的著作物  著作物から新たな著作物を創作した物

         編集著作物 素材の選択・配列に創作性のあるもの、例えば、智恵子抄、百科事典

         データベース 情報の選択・構成に創作性のあるもの 日経ニーズ

         プログラムゲームソフトを含む。 昭和60年改正時プログラムの保護が明記された。

 著作権の有無で訴訟中   職業別電話帳

 著作権のないもの

  画風、書風、これらは表現ではないから。(思想、アイデアである)

  船荷証券、木目化粧紙、メニュー、時刻表、株価指数 に記載の事実

    これらの物に創作性のある柄や絵があれば、それは著作物となる。

  自動車や椅子のデザイン(実用的な物は著作物でない。保護は意匠法でする。)

  新聞や雑誌の記事は著作物であるが、単なる事実を記載している物は著作物ではない。

   (野球のスコア、株価など)

 

 

1−3 著作権法の権利

 

 著作権の期限は著作者の死後50年が基本、しかし写真、映画、無名・変名・団体著作物は公表後50年である。

著作者の権利は著作者人格権と財産権である著作権で構成されている。著作者人格権は一身専属で譲渡できない。

著作者人格権

公表権    公表するかいなかを決める権利

氏名表示権  氏名を表示するか、またその際どの様な氏名にするかを決める権利

同一性保持権 意に反する改変を拒否できる。

           日本では心情・こだわりの保護がされており厚い保護であるが、

           国際条約のベルヌ条約では名誉や声望を損なう改変の拒否に限定している。

著作権(著作財産権)    支分権の束として構成され、個々に切り売りが出来る。

   著作権の基本は複製権である。複製の様々な形を分けて記載している。包括的な権利ではない。

   複製権とは、模倣の禁止の権利である。従って、偶然の一致・類似は、それが証明できれば権利侵害ではない。

   模倣とはアクセスが出来、かつ結果が類似していること。侵害者が独自での創作を立証する必要がある。

権利の一覧

複製権      海賊版の出版は権利侵害、これを読むことは侵害に当たらない。

         許諾を必要としない複製   図書館での複製、論文への引用、教科書への掲載

                       試験問題としての複製、政治演説への利用

                       時事の事件報道の利用、裁判手続きでの複製

                        これらは補償金を払う必要がある

上演権・演奏権  上演演奏には録音録画されたものの再生、電気通信設備を使っての伝達も含まれる。

放送権・有線送信権 有線送信にはDB(データベース)のオンラインサービスも含まれる。

口述権      朗読

展示権      美術、未公表の写真を 原作品により展示 

上映権・頒布権  上映と複製物の頒布(はんぷ:有償・無償を問わず公衆に譲渡または貸与すること)

貸与権      映画の著作物以外にその複製物を貸与

翻訳権・翻案権   翻訳、編曲、戯曲、脚色、映画化

 翻案物には翻案者の著作権も付き、原著作者とともに重層的にかつ、お互いに独立の権利を持つ。

二次的著作物利用権 翻案することによる物についての上記の権利

著作権、人格権以外の第三者利用権

出版権     出版目的で、出版社に対し複製権に基づき設定される権利

 

著作隣接権

 実演家に与えられる権利で、録音権録画権、放送権・有線送信権

              商業用レコードの二次使用料請求権、貸与権・貸与報酬権

 

 レコード制作者にあたえられる権利  複製権、商業用レコードの二次使用料請求権

                   貸与権・貸与報酬権

 放送事業者にあたえられる権利    放送に関わるおと映像の複製権、放送権・再放送権

                  (その放送を受信し再放送、有線放送する権利)

                   テレビ放送受信伝達権

                  (放送を受信し映像を拡大する特別の装置を用いて                                     その放送を公に伝達する権利 )

 有線放送事業者 放送事業者と同じような権利(放送を有線放送と読み替える)

 

権利侵害に対する請求権  差し止め請求権、損害賠償請求権、名誉回復請求権

   

2.デジタル化、マルチメディア時代の到来と著作権法上の問題点

現行著作権法上予定されていない形態の登場が起こっている。法律は体系的で、秩序だた成長が基本の姿であるが、技術の進歩はアナーキーであり、ここに齟齬が生じる。

 

2−1 マルチメディアの定義

  @デジタル信号によっての多様な情報(文字、図形、映像、音楽)を統括した伝達

  A情報を受ける側においても、その選択、加工、編集等を可能にした双方向な情報の伝達

  B情報はコンピュータ上で稼働する マルチメディア・ソフトにより伝達・提供される。

 

2−2 マルチメディアの特徴

     双方向性     放送、有線送信にはあたらない通信の登場。

     プログラム付き  ユーザーによって、表現の現れ方が異なる。

      デジタル     複製・改変が容易である。複製すると本物が出来てしまう。

      多様な素材の活用 他の著作物を改変しつつ創作する。

               利用する素材は従来の法の下での著作物が多い。

      著作者が多い   隠れた素材が多い事、また制作に関与した者すら明確でない場合もある。

              インターネット上での共同著作などの登場。

 

 

2−3 マルチメディア時代の著作権法上の問題点

 

@ 情報の伝達・提供形態に関する問題

@ −@ 形態が双方向On Demandである。「放送」「有線放送」の概念になじまない。

放送、有線放送   同一内容公衆への同時提供

有線送信      公衆によって直接受信、異時を含む。DB提供を念頭に置く。

インターネット上では、人工衛星を使っているのか、太平洋の底のケーブルを使っているのか、区分はできない。

もはや無線・有線の区分は意味を失いつつある。

 

LAN上でのやりとりは、特定少数にオンラインで情報提供するものであり、「有線送信」にも該当しない。

 

@−A 著作隣接権の漏れ

「放送」に関する権利はは放送事業者に与えられている。

しかし、マルチメディア事業者(提供者)には、何ら権利がない状態である。

 

A デジタル化されている事による複製の問題

     複製・改変が容易である。

     品質劣化がない。本物が出来る。

 

B マルチメディア・ソフトの特徴上からの問題

     加工素材となる著作物が多数となる。膨大な権利処理手続きが必要となる。

     また、多数の著作者 関与した者すら明確ではない。

C 権利処理への懸念  

権利者の懸念  権利侵害の虞が増大する。デジタル化への躊躇が生ずる。

利用者の懸念  権利処理の煩雑さ・コストの高さで意欲をなくす。発展が阻害される。

   適法な権利処理を行ったつもりが、真の権利者から差し止めを受ける危険性がある。

   著作権フリー素材が出回っているが、本当に信用できるのか。

   勝手に掲載した物が混じっていないのか。

同一性保持権からの制約

  許諾を得て改変しても、ある時、「意に反する」と差し止めを食ったら、それまでである。

 

2−4 マルチメディア時代の課題

 

権利処理の仕組みつくり → 著作権を対価徴収権に落とす。

              データベースも含めた情報利用権としての著作権

「超流通」構想

  「利用」にたいする課金、ソフトウエアやデジタル情報をどの程度利用したかを記録するボードを取り付けた超流通コンピュータを用い、対価を計算 ・徴収し、提供者間で精算する。  (筑波大 森亮一教授)

 

「コピィマート」構想

  N/W上での著作物市場で、著作物をN/Wに乗せる者と著作物としての提供を受ける者との「契約」で、権利処理がはかられる。 (京都大 北川善太郎教授)

3 最後に

財の価値のウエイトは、物から債権へ、債権から情報へと変わりつつあります。

情報・知識が大きい富を生む時代になってき、知的財産権が、国家戦略、企業戦略を左右するの時代になってきました。

情報の特徴として、伝達の度に増殖し、かつ利用するのに占有の必要はなく、また自由に国境を越えていくものです。

情報の価値が高まっている今、情報発信者は、またプロバイダーも、慎重な、謙虚な行動が求められます。 

今や、新しい基本的人権としての情報発信権、情報受信権が生まれました。情報の偏在は富の偏在につながります。

情報貧民が新たに登場します。

情報を発信できるのは、いまや権利としては平等にありますが、それでもまだまだ特権に属する状況だと思います。

 発信者は、著作権だけではなく、名誉侵害等にも気をつけ、無法者のそしりを受けないようにしましょう。


 プロバイダーと発信者が心すべき事を掲げます。

通信障害、ハード障害  ユーザーのデータを消す。復元できない。3月9日にNECのMESHはこれをやってくれた。規約上、補償はない。


著作権の侵害      SOFTの不法COPY、画像・音楽等の盗用。


名誉毀損        NIFTYでの裁判沙汰が有名。


プライバシー侵害


わいせつ画像


肖像権・人格権侵害


詐欺広告、嘘の発信


瑕疵のある商品販


営業妨害



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