美保神社
松江市美保関町美保関608  its-mo

鳥居

交通
松江駅より一畑バスと美保関町民バス80分



祭神
御穂須々美命(風土記)

平成データ
三穗津姫命、事代主神
合祀 神屋楯比賣命、沼河比賣命、媛蹈鞴五十鈴媛命、五十鈴依媛命、稻背脛

摂社
若宮社 天日方奇日方命 合祀今宮社 政清霊  合祀被社 神号不詳
宮御前社 埴山姫命
合祀宮荒神社 奧津比売神、土之御祖神、奧津彦神 合祀船霊社 天鳥船神 合祀稲荷社 倉稲魂神
恵美須社 事代主神
随神 豊磐間門命、櫛磐間門命
御霊石 御穂須々美命

境外摂社 地主社 御穂須々美命  客人社 大己貴命 など多くの摂社がある。


神門と拝殿

由緒
 島根郡の式内社で美保神社。『出雲国風土記』には美穂社。

 『風土記』国引き神話で云う三穂の崎であり、「高志の都都の三崎を、国の余ありとやと見れば、国の余りあり。」と国引きした崎であり、綱は夜見島で、柱は伯耆国の火神岳で、伯耆大山である。
 『風土記』島根郡の美保郷で、「所造天下大神命、高志国に坐せる神、意支都久辰為命の子、俾都久辰為命の子、奴奈宣波比売命に娶ひて産みましし神、御穂須々美命、是の神坐します。故、美保と云ふ。」とある。
 現在の当社の祭神は三穗津姫命と事代主神であるが、本来は御穂須々美命であるはず。いつ頃から事代主神が祭神に入ったのかは定かではない。記紀神話の国譲りの物語にあやかって持ち込まれたのか、または海の豊穣の神である夷神として祀られていて、後に国譲り神話とつながって、ローカルな祭りが青柴垣神事や諸手船神事に昇華していったのだろう。上方のエッセイストの裏紫都子さんは応仁の乱などで都の貴族が流出してきて、大嘗祭の智恵を入れたりして祭りの演出を行ったのが今日まで続いているのではないかとの見方をされている。


本殿

客人社 its-mo


霊石(磐座)


青柴垣神事 当日 当屋神主、小忌人、供人


お祭りの進行を触れ回る編木(ささら)


当屋神主が乗船する


船は高天原へ繰り出す

お姿
 東を向いて鎮座、この岬は古代より交通の要衝であった。また関でもあり、徴税していたようだ。
 本殿は文化十年(1813)の造営、大社造の二殿連棟の形式である。国の重要文化財。


お祭り
 4月 7日 青柴垣神事  船の出る日
12月 3日 諸手船神事  船の出る日
  

美保神社略記


御祭神
三穂津姫命(みほつひめのみこと)別号大御前(おほごぜん)左殿(向って右の御殿 )
事代主神(ことしろぬしのかみ)別号二御前(にのごぜん)右殿(向って左の御殿) 。

事代主神
天照大神の御弟須佐之男命の御子孫で、出雲大社に鎮ります大國主神の第一の御子神 様にましまして、天神の系を承けさせられた尊い大神様である。夙に父神を御扶けな されて國土の経営産業福祉の開発におつくしになった。天孫降臨に先だち天つ神の使 の神が出雲にお降りになって大國主神にこの國を天つ神に献れとお傳へになった時、 事代主神はたまたまこの美保碕で釣魚をしておいでなされたが、父神のお尋ねに対し 、畏しこの國は天つ神の御子に奉り給へと奉答せられ、海中に青柴垣(あをふしがき )をお作りになり、天逆手(あめのむかへで)を拍っておこもりになり、大國主神は そのお言葉通り國土を御奉献になったと傳へてゐる。かくて事代主神は多くの神神を 帥ゐて皇孫を奉護し我國の建國に貢献あそばされた。又神武天皇綏靖天皇安寧天皇三 代の皇后はその御子孫の姫神で、國初皇統外戚第一の神にあたらせられ、なほ古来宮 中八神の御一柱として御尊崇極めて篤い神様である。
當神社古傳大祭である四月七日の青柴垣(あをふしがき)神事、十二月三日の諸手船 (もろたぶね)神事は、悠遠の昔、わが大神様が大義平和の大精神を以て無窮の國礎 を祝福扶翼なされた高大な御神業を傳承顕現し奉るものである。

三穂津姫命
高天原の高皇産霊神(たかみむすびのかみ)の御姫神にましまして、大國主神の御后 神として、高天原から稲穂を持って御降りになり庶民の食糧として、廣く配り與へ給 うた有難い大神様で、美保といふ地名はこの神の御名にゆかりありと古書は傳へてゐ る。

御神徳
そもそも事代主と申す御神名は事知主の義であって、すべて世の中に生起するあらゆ る事を辧ヘ知しめて是非曲直を判じ邪を避け正に就かしめられる事の大元を掌り給ふ 意味で、平たくいへば人の世の日常の行為や行動を教導し主宰せられる偉大な御神徳 を頌へ奉ったもので、大神様は実に叡智の本躰、誠(真実、真事)の守神と拝し奉る 。又大神様を明神様・ゑびす様と申上げ釣竿を手にし鯛を抱かれた福徳円満の神影を ゑがいて敬ひ親しみ、漁業の祖神、海上の守護神と仰ぎ、水産海運の御霊験の廣いこ とはあまねく知られて居る通りである。そして大神様の大義平和叡智推譲の御神徳、 産業福祉の道をお拓きになった御神業、庶民慈育愛撫の御神恩を感謝尊崇し、福徳の 神と仰ぐ信仰は極めて廣く行きわたってゐる。
又當社に古くから傳って居る波剪御幣(なみきりごへい)は大神様の海上守護の神徳 に因んで、山なす狂乱怒涛をも推し切って航行を安泰ならしめ給ふ霊徳を表現した御 幣で、延いて水災火災病難等原因の何たるを問ふことなく人生に起る狂乱障害を祓除 し家内の安全家門の繁栄を守り給ふとしてこれが拝授を願ふ篤信者が多く、そのあら たかなる霊験は数多い開願報賽の絵馬によっても窺ふことができる。又経済商業に福 運を授け給ふ神としての信仰は、今もいろいろ土俗に残り、商業の「手拍ち」は天の 逆手の故事に起因すると申してゐる。
三穂津姫命は高天原の齋庭の稲穂を持ち降って農耕を進め給ふたので、當社には古く から御種を受ける信仰があり、安産守護の御神徳は、特に著しい。稲穂は五殻の第一 である米を意味するのは勿論、農作物一切を代表し更に生きとし生けるものことごと くの生命力を表現してゐる。従って大神様は人間は云ふに及ばず一切の生物の生命力 を主宰せられる尊い大神様である。故に古人はその御種について、「これを頂いて帰 り時に従ってまけば早稲でも晩稲でも糯でも粳でも願望のものが出来る。然かのみな らず麦でも大豆でも小豆でも出来る。まことに不可思議な事である」と感嘆してゐる が、田植後には農家の人達の豊穣祈願のお参りが盛んであり、十二月三日の諸手船( もろたぶね)神事は一つに「いやほのまつり」ともいひ、豊穣感謝の意味もあってこ れまた一般の参拝が頗る多い。
世界的文豪小泉八雲(ラフカディオ・ハ−ン)はその紀行文の一節に初夏の田園風景 を叙し、美保神社の神札(世にせきふだと申す)が稲田に立てつらねられて居る状を 白羽の矢のやうであると感心し青々とした田の中に白い花が点々と咲いたやうである ともいひ、この白羽の矢の立って居る処では蛭が繁殖しないし飢ゑた鳥も害をしない と書いてゐる。これは豊作守護のおかげを端的に言ひ表はしてゐるものである。

沿革
さて當美保関は前に述べたやうに大神様の御神蹟地であるばかりでなく、所造天下大 神とたたへまつる大國主神がその神業の御協力の神少彦名命をお迎へになった所であ り、又その地理的位置は島根半島の東端出雲國の関門で、北は隠岐、竹島、欝陵島を 経て朝鮮に至り、東は神蹟地、地の御前、沖の御前島を経て北陸(越の國)、西は九 州に通ずる日本海航路の要衝を占め、更に南は古書に傳へる國引由縁の地弓ケ浜、大 山に接し、上代の政治文化経済の中心であったと考へられる。現に考古学上の遺跡や 遺物によってもこれを窺ふことが出来る。かやうな訳で當神社は非常に古く此所に御 鎮座になり奈良時代巳に世に著はれ、更に延喜式内社に列せられ、後醍醐天皇は隠岐 御遷幸の砌り神前に官軍勝利、王道再興を御祈願になったと傳へるが、其後戦乱の世 に軍事上、経済上の理由から群雄の狙ふところとなり、遂に元亀元年、御本殿以下諸 殿宇を始めとして市街悉く兵火のため烏有に皈し、吉川廣家これを再興し日本海航路 の発達と共に上下の崇敬を加へ明治十八年には國幣中社御列格の御沙汰を拝し、更に 明治二十一年には叡慮を以て御剣一口を御下賜あらせられた。

文化財
現在の御本殿は文化十年の造營であって、大社造の二殿連棟の特殊な形式で、世に美 保造又は比翼大社造等と申し國の重要文化財に指定されてゐる。御本殿のかかる形式 は文書によると天正年間にその痕跡が窺はれるが。現在の整備せられた構造は文禄五 年吉川廣家が朝鮮にあって立願のため御造營をした時まで遡ることが出来る。拝殿以 下は昭和三年の新營である。當神社の御祭神は鳴物を好ませ給ふと廣く信ぜられて種 々の楽器の奉納品が多く、そのうちの八四六点は美保神社奉納鳴物として、又諸手船 神事に用ゐる諸手船二雙及び社蔵のそりこ舟一雙は古代船舶の遺型を存するものとし て共に國の重要有形民俗文化財に指定され又隠岐、中海沿岸で漁業に使用せられたト モド船及び沖縄のサバニ−は共に県の有形民俗文化財に更に社蔵の古筆手鑑は県の有 形文化財に指定されゐる。

末社・其他
◎本殿、装束の間に奉齋する末社
 名稱       祭神
 大后社      神屋楯比売命、沼河比売命
 合祀姫子社    媛蹈鞴五十鈴媛命、五十鈴依媛命
 合祀神使社    稻脊脛
○境内に奉齋する末社
 若宮社      天日方奇日方命、
 合祀今宮社    政清靈
 合祀秘社     神号不詳
 宮御前社     埴山姫命
 合祀宮荒神社   奧津比賣命、土之御祖神、奧津彦命
 合祀船靈社    天鳥船神
 合祀稻荷社    倉稲魂命
 恵美須社     事代主命
 随身       豐磐間門命、櫛磐間門命
 御靈石
○境外に奉齋する末社  
沖之御前     事代主命、活玉依媛命  
地之御前     事代主命、活玉依媛命  
客人社      大國主命  
合祀幸魂社    大物主命  
天王社      三穗津姫命  
地主社      事代主命、或は御穗須須美命と傳ふ  
久具谷社     國津荒魂神、多邇具久命  
客社       建御名方命  
合祀切木社    久久能智神

参考 『式内社調査報告』、『平成祭礼データ』、『日本の神々』

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