万葉集巻第四紀の国

相聞したしみうた

柿本朝臣人麻呂が歌四首
 496 三熊野之 浦乃濱木綿 百重成 心者雖念 直不相鴨
み熊野の浦の浜木綿はまゆふ百重なす心は思へど直ただに逢はぬかも
熊野の浜辺の浜木綿のはぁがいに重なちゃらいしょ、ほれぐらいわえはすきやねん、あわれへんけろ


神亀[じむき]元年[はじめのとし]甲子[きのえね]冬十月[かみなつき]、紀伊国に幸[いでま]せる時、従駕[みとも]の人に贈らむ為、娘子に誂[あつら]へらえて笠朝臣金村がよめる歌一首、また短歌
 543 天皇之 行幸乃随意 物部乃 八十伴雄与 出去之 愛夫者 天翔哉 軽路従 玉田次 畝火乎見管 麻裳吉 木道尓入立 真土山 越良武公者 黄葉乃 散飛見乍 親吾者不念 草枕 客乎便宜常 思乍 公将有跡 安蘇々二破 且者雖知 之加須我仁 黙然得 不在者 吾背子之 徃乃萬々 将追跡者 千遍雖念 手弱女 吾身之有者 道守之 将問答乎 言将遣 為便乎不知跡 立而爪衝
天皇おほきみの 行幸いでましのまに 物部もののふの 八十伴男やそとものをと出でゆきし 愛うつくし夫つまは 天あま飛ぶや 軽の路より玉たすき 畝火を見つつ あさもよし 紀路に入り立ち 真土山 越ゆらむ君は 黄葉もみちばの 散り飛ぶ見つつ親しけく  吾をば思はず 草枕 旅をよろしと 思ひつつ 君はあらむと あそそには かつは知れども しかすがに 黙もだも得あらねば 我が背子が 行きのまにまに  追はむとは 千たび思へど 手弱女たわやめの 吾が身にしあれば 道守みちもりの 問はむ答を 言ひ遣らむ すべを知らにと 立ちてつまづく
お上の いれますんで いっぺんに へーてーさんや がいなお供の人らと つれもて 行ったんやして 軽の道から 畝傍を見たんよ ほいで紀州の道に入りくさったんよ 真土山を越えてそぅやいしょ うちのおいやん ほーど紅葉のは−の とんでんの見て かえらしてしよった うちなんど ほったらかして 旅はえーえなーて やってらいしょ ほやけどお なんやきぼきぼ してられへんね うちのおいやん 行った道を おおて行こて なんぼも 思うんやが うち やわいめんたやろ 関の番人に 問われたら わえやし あかなして 行っちゃろと思ても どこんでくさすねん
紀ノ川沿い


反し歌
 544 後居而 戀乍不有者 木國乃 妹背乃山尓 有益物乎
後れ居て恋ひつつあらずば紀の国の妹背の山にあらましものを
後によう、ほったかれて、好いてんのに、うち、紀伊の国の妹背の山やったらええのに


 545 吾背子之 跡履求 追去者 木乃關守伊 将留鴨
我が背子が跡踏み求め追ひゆかば紀の関守い留めなむかも
うちのおいやんの跡、おおて行ったら、紀の国の番人、とめんのやろか

万葉集巻第六紀の国

万葉集紀の国

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