紀の国の民話・昔話・伝承 神々編 那賀郡、伊都郡、橋本市




雷松


 山崎神社(岩出町)の本殿前にある大きな松を云う。
 昔、この松に雷が落ちて社頭に置いてあった太鼓の一方の皮を破ったのでここの神様にその太鼓で伏せられたという。
関連する神社 山崎神社「大市比賣命、大山津見命、須佐之男命」那賀郡岩出町赤垣内108



逆檜


 鞆八幡宮(紛河町)をつくった鶴姫が都から突いてきた杖を立てておいたのが芽をふき根を下ろしたものといわれ、枝の先はしだれ柳のように垂れ下がっていたという。
関連する神社 鞆渕八幡神社「應神天皇」那賀郡粉河町中鞆渕58



下筒香の巨岩


 下筒香(高野町)に鶏卵を逆さまに立てたような巨岩がある。 これは、昔、明神さんが丹生川を遡ってここまできた時、猪が急に飛び出してきた。 明神さんはとっさに傍らの岩にのぼって「汝、我を救わんとせば大きくなれ」といったところ岩はだんだん大きくなって今の姿になったという。



八幡塚


 正徳年間に暴風雨のため、この塚が壊れ、中から長さ二尺四寸、反九分の剣が出てきた。 ある人がこの剣を家に持ち帰ったところ一晩じゆう家が振動して眠ることができず、翌朝羊の宮へ納めたという。
関連する神社 西田中神社「火産靈神、譽田別命ほか」那賀郡打田町中井坂357



下鞆淵


 お宮八幡を勧請した鶴姫御前が黄金及び朱を埋めてあるという。
関連する神社 鞆渕八幡神社「譽田別命ほか」那賀郡那賀郡粉河町中鞆渕58



杉の宮の白蛇


 応永の頃、竜門に杉の宮という神社があった。その神主の和麿と妻の藤代のあいだに子供がなかったので二十一日の間神に願をかけたところ、妻は腹に自蛇が入った夢を見て妊娠し、女の子が生まれた。 ある日、その娘が琴を弾いていると若い男が呪われ、結婚の申込みをしたが、娘は「わたしは杉の宮の精であるから人間と交わることができない」と返事した。 その翌々日からこの娘の姿が見えなくなり、杉の宮からほど遠からぬ地の岩間の奥に白蛇が住むようになり、時々その前の淵を泳いでいるのを見た人があろという。
粉河町
 



犬戻り


 丹生川の人達が雨乞いのため河根の宮から「天下り面」を借りてきた。 ところが、村へきて箱をあけてみると中に面が入っていない、すぐ、河根へ引き返してみると、面は村境から犬になって帰っていた。 そこで「犬戻り」という地名が生まれたという。
関連する神社 河根丹生神社「丹生都比賣命」伊都郡九度山町河根1
 



山崎神社と雷


 山崎神社の境内に雷が落ちて、社頭に置いてあった大太鼓の皮を破ったので、神様(大市姫神)が怒って、その破れ太鼓を雷にかぶせた。 雷は再びこの地に落雷しないことを誓って許された。 その後、この神社では雷除けの護符を出すという。
関連の神社 山崎神社「大市姫神」那賀郡岩出町赤垣内108



隅田八幡宮


 神功皇后が皇子(後の応神天皇)とともに日高の衣奈浦から大和へ向う途中この地に滞在。
 欽明天皇の御代に八幡宮を勧請したという。また、神宝の古鏡は韓国人が皇后に献上したものという。
関連の神社 隅田八幡宮 橋本市隅田町垂井622



鞆淵八幡宮


 庄司家の娘・千代鶴(一説は鶴千代)が親に勘当され、京にのぼり鶴姫御前として宮仕えをした。 後に勘当がとけ生国へ帰り、この地に八幡宮を勧請し土産神にしたという。
 宮前に「逆桧」というかわった木があったが、それは千代鶴が親に使った杖が根を下ろし芽を出したものといわれていた。 一名「お宮八幡」と言う。
関連の神社 鞆淵八幡宮 那賀郡粉河町中鞆渕58



疱瘡神祠


      大西家に一人の老婆が訪れ一夜の宿を乞うたところ、その家の主人が心よく泊めてやった。 翌朝、老婆がその家を出る時、「わたしは疱瘡神です.昨夜のお礼にこの辺りに疱瘡がないようにしてあげます」といった。 その後、大西家では家の前に疱瘡神の小祠をまつるようになったという。
岩出町備前



名の知れぬ神


 東郷の丹生神社の境内に神名の知れない小社がある。 昔、地頭が高野山から名の知れぬような神は取り除いてしまえといわれ、その通りにしたところ、その晩から倉谷の奥に満月のように光る異様なものが現われた。 それで村人たちは、名の知れぬ神は倉谷の奥に住む竜神かも知れぬ、とまた元の場所へ小社を建ててまつったという。
関連する神社 東郷丹生神社 伊都郡九度山町東郷59



鶏を忌む神


 紀の川で木こりに拾われ、柏木の地(かつらぎ町) にまつられた神様は鶏の鳴き声と釣瓶のきしむ音がきらいだという。 これは以前、高野の柏木という所でまつられていたが、その地に疫病がはやり、それをこの神様のせいにし、疫病神として紀の川に投げ込まれた時、鶏が鳴き釣瓶のきしむ音があちこちでしていたためという。
かつらぎ町柏木




参考文献
 和歌山県史 原始・古代 和歌山県
 日本の民話紀の国篇(荊木淳己)燃焼社
 和歌山の研究5 方言民俗篇(和田 寛)清文堂

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