紀の国の神話と神々 伊弉冉尊




伊弉諾尊と伊弉冉尊の国生み神話


 高天原より淤能碁呂島に天降り、天御柱を見立てて神婚し、淡路や筑紫、大八州などの国生を行った。西九州を筑紫の白日別と呼んでいる。二柱は天空神・地母神の一対の夫婦神である。 国生みの次に、大事忍男神、石土毘古神、石巣比売神、大戸日別神、天吹男神、大屋毘古神を生んでいる。 最後に火之加具土神を生み伊弉冉尊は焼死、黄泉国に埋葬される。

 黄泉国へ赴むいた伊弉諾尊は阿波岐原で禊ぎを行い、この時、八十禍津日神、大禍津日神、三綿津見神、住吉三神等が成り、最後に天空の円を示す三貴神、天照大神、月読神、素盞嗚尊が生じる。太陽、月、台風の目の神格化である。

 淤能碁呂島
  和歌山市と淡路島の間の友が島の三島の一つの沖の島とされる。 
  福岡市西区の能古島とする説もある。

 淡路島
  海人族の安曇氏の拠点。河内の王朝の母なる国。聖水、御食都国。

 大屋毘古神
  弥彦神である。白日別、大禍津日神と同一神格と推定している。後に五十猛命も習合する。

 伊弉冉尊の葬られた黄泉国
  日本書紀一書 紀伊国の熊野の有馬村 三重県熊野市有馬町 花窟神社  
  古事記 出雲国と伯耆国の境の比婆山 出雲国風土記には宇賀郷の北浜に黄泉の穴ありとする。

 禊ぎの場所
  筑紫の日向の橘の阿波岐原 宮崎市阿波岐原町産母127-イ-ロ 江田神社 
  阿波の鳴門

 伊弉諾尊の幽宮
  淡路の国 兵庫県津名郡一宮町多賀 伊弉諾神宮

 火之加具土神
  火之夜芸速男神、火産霊

 皇祖神天照大神の親神
  二尊は宮廷にも祀られず皇祖親神でもなかった。貞観元年(859年)無品から最高一品へ格付けが飛躍している。 この頃、皇祖神の親神との系譜上の位置づけがされた。それまでは淡路の海人が祀る地方神であった。


伊弉諾尊と伊弉冉尊の伝承の伝播

 淡路の野島海人や三原海人の手で紀の国や大和等に運ばれた。川沿いに内陸にまで運ばれている。
奈良県生駒市上町4447 伊射奈岐神社
奈良県北葛城郡上牧町下牧512 伊射奈岐神社
大阪府吹田市山田東2丁目3-1 伊射奈岐神社
福井県大飯郡大飯町福谷48-7 伊射奈伎神社
徳島県美馬郡穴吹町三島字舞中島52 伊射奈美神社
兵庫県津名郡一宮町多賀740 伊弉諾神宮
滋賀県犬上郡多賀町多賀604 多賀大社
大阪府吹田市山田東2丁目3-1 伊射奈岐神社
三重県伊勢市中村町 伊勢皇大神宮別宮 伊佐奈岐宮、伊佐奈弥宮
兵庫県明石市岬町19-8 伊弉冊神社
京都府舞鶴市桑飼下杉ケ迫216 伊智布西神社


紀の国の向かい、阿波国の伊弉諾尊、伊弉冉尊神話と関連の深い神社

 阿波は国生みではその名を大宣都比売と呼ばれる。照葉樹林文化の死体化生型神話の神である。 阿波国美馬郡には伊射奈美神と焼死により誕生した神々を祀る神社がある。この神話はこの地域で語られていた。


徳島県徳島市一の宮町西丁237 一宮神社「天石門別八倉比賣命、大宜都比女神」 
徳島県三好郡三好町大字昼間字宮内3  天椅立神社「伊邪那岐命、伊邪那美命」
徳島県三好郡井川町井内字馬場ノ西22馬 波尓移麻比メ神社(現馬岡新田神社)「埴山姫命」
徳島県美馬郡脇町拝原1030 弥都波能賣神社(現八大龍王神社)「彌津波能賣命」


紀の国の南−熊野−の伊弉諾尊、伊弉冉尊神話と関連の深い神社

 農耕・稲作とは縁の遠い熊野と地、ここに伊邪那美尊の墓陵の伝承がある。田辺市の海岸の磯間岩陰の内部は古墳時代の墓であり、八つの石室が発見されている。太平洋岸の地は古くから他界信仰の地であった。 岸壁の穴は紀伊海人や熊野海人の実際の墓であった。魂を花で祭るとする海上の明るい他界であった。紀伊海人や淡路海人が伊邪那美尊の神話を持ち込んだのである。
 平安時代熊野信仰がはやりとなった。熊野三所神のムスビの神と国生みの神々とが結びついた。繁殖生成の山の女神である熊野夫須美神が伊邪那美尊、その夫としての熊野速玉神が伊邪那岐尊、二神の間に生まれた樹木の霊としての家津美御子神が素盞嗚尊と比定された。 比定は山の女神が木種を播くと語られる伝承につながっている。

和歌山県東牟婁郡本宮町本宮1110 熊野坐神社「家津美御子大神、速玉之大神、事解之男神、伊邪那美大神」
和歌山県新宮市新宮上本町1 熊野早玉神社「熊野速玉大神、熊野夫須美大神、家津美御子命」


火之加具土神を祀る主な神社

 
静岡県周智郡春野町領家841 秋葉山本宮秋葉神社
静岡県熱海市伊豆山上野地の1 火牟須比命神社(現伊豆山神社境内摂社の雷電社)「火牟須比命荒魂」
京都市右京区嵯峨愛宕町1  愛宕神社
和歌山市鳴神1089 香都知神社(現鳴神社摂社)
和歌山市和田438  静火神社(現竃山神社摂社)
 
 
参考文献 和歌山県史 原始・古代



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