熊野古道中辺路、和歌山県の王子社
大坂本王子
田辺市中辺路町近露字逢阪2511 地図


十丈王子から1時間半、前半は登り、後半は下り坂。
悪四郎山の山腹を横切り、上田和茶屋跡に出る。


この山上は上田和と呼び標高六百余。熊野詣での盛んな頃はここに茶店もあったといわれ、大正期にも人家があって林中には三界霊塔やお墓もある。またこの山上には霜月二十三日の夜になれば、東方はるかに三体の月が現れるとて、ここにあった注連掛け松のもとに大勢集まり栗や黍の餅を供え、心経をくり、月の出をまったと云う。
 三体月は熊野権現垂迹の伝承の中にも見られる。


上田和茶屋跡の説明

 「田和」と云う言葉は山中の場所を表すのによく使われる。


 続いて三体月の伝承の地が出てくる。
 今は昔、熊野三山を巡って野中近露の里に姿を見せた修験者が里人に「わしは十一月二十三日の月の出たとき、高尾山の頂で神変不可思議の法力を得た。村の衆も毎年その日時に高尾山に登って月の出を拝むがよい。月は三体現れる。

 半信半疑で村の庄屋を中心に若衆連が陰暦十一月二十三日の夜高尾山に登って月の出を待った。
 やがて、時刻は到来、
 東伊勢路の方から一体の月が顔をのぞかせ、アッという間にその左右に二体の月が出た。
 三体月の伝説は上多和、悪四郎山、槙山にもある。

 十一月というと山中では冷え込み、その空気と水蒸気がもたらす自然現象だとされる。しかしこのような不思議な現象が起こる熊野を霊験あらたかな所とする。


大坂本王子碑



 逢坂峠を越すと大坂本王子。
 藤原宗忠は「坂中に蛇形の懸かった大樹がある。昔、女人が化成したと伝えられる」と日記に書いている。
 『御幸記』には、重點王子の後に、「次で、大坂本王子に参ず」とある。
 『西国三十三所名所図会』に、「相坂王子社、相坂峠の上り口より左へ入 近露村の内 大阪尻にあり」とある。

 社地跡に鎌倉時代後期の笠塔婆が、王子社跡をとどめている。


笠塔婆

 


紀伊続風土記 巻之七十五 牟婁郡 四番荘 近露村

○大坂王子碑
 相坂峠にあり 往還の側の森にして社なく碑を建てて銘に大阪王子と記せり 『御幸記』には大坂本の王子とあり

 


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