輪、渦、渦巻、螺旋について


1 自然の中の渦巻  

 かたつむり。巻貝。アンモナイト(カンブリア大爆発)。
 蔓草。アサガオ。クラゲ。人の頭のつむじ。指紋。
 つむじ風。竜巻。螺旋状の雲。水の流れの中にできる渦巻。カルマン渦、高さ千米付近に顕著な気温逆転層があり、山頂がその上端よりも高く、風向がほぼ一定で比較的強い風が吹くなどの一定の条件がそろうと発生することがある。
 年輪。虹。北斗七星などの天空の回転。
 神奈備山。 蛇のとぐろ(平成15年4月14日に養父郡大屋町宮山の一ノ宮神社の境内で間違って白い蛇のトグロを踏んでしまったことがあります。いまだに足の裏の感覚として固いロープの並んだものを踏んづけた感じを覚えています。次に大屋町宮本の御井神社に参詣した帰路の坂道でおもいっきりこけました。幸い手のひらをすりむいた程度の怪我でした。神罰がこの程度で済んだことに感謝です。)。
  くるくる回って落ちるカエデの種子。夏に草むらなどにいる小さな渦を巻いたように飛ぶユスリカ。夕方になると鳥が集団で空をぐるぐる回って飛んでいる様。ぐるぐると渦を巻くアリの群れ。寝る前にグルグル回る犬。クルクル舞う魚。


 人間がからむ渦:−
  舞。盆踊り。子供の遊び(かごめかごめ等)。丸くなって踊るのは、神の降臨が渦を巻いて行われると信じられたから。
 ころ。こま。
 人によっては、霊山や神社から螺旋状の気が立ちのぼっているのを感得できた。 人によっては。遥かな天空の彼方に渦巻く宇宙の姿を見通していた。
 台風。太陽の誕生。木星の大赤斑。惑星の誕生。天の川銀河。ブラックホール。



2.神話の中の渦巻

古代ケルトの渦巻き模様 「トリスケル」



 古事記  
 国稚く浮きし脂の如くして、海月なす漂へる時、葦牙の如く萌え騰る物によりて成れる神の名は宇摩志阿斯訶備比古遅神。比重の軽い物(例えばクラゲ)が水に入ると螺旋状に動く。

 伊邪那岐命・伊邪那美命二柱の神、天の浮橋に立たして、その沼矛を指し下ろし て画(カ)きたまへば、塩こをろこをろに画き鳴して引き上げたまふ時、その矛の末より垂り落つる塩、累なり積もりて島と成りき。(回すイメージを感じる。)

 イザナギ・イザナミの天の御柱を行き廻ること。
 
『播磨国風土記』揖保の郡揖保の郷 天日槍命は宇頭の川底(揖保川河口)に来て、国の主の葦原志挙乎命に土地を求めたが、海上しか許されなかった。天日槍命は剣でこれをかき回して宿った。

シュメール神話の渦巻く大洪水は、旧約聖書に影響した。

インド神話『マハーバーラタ』『ラーマーヤーナ』では、神々とアスラが大蛇を曼荼羅山に巻きつけて引き合い、大海を撹拌する。渦巻く大海の中から太陽も月も、女神も他の神々も生まれる。

 『リグヴェーダ』では、神々は激しく荘厳な円形的舞踊をし、混沌の埃(ほこり)・空気を捲きたてて宇宙を創造した。

 中国神話では、太初には何者も存在せず、一種の気が凛々と満ちて渦巻くところから、天地創造が始まる。 道教の聖山 崑崙山に至る龍の乗り物。龍は身を螺旋状にくねらせながら飛ぶ。

 奈良県明日香村に、飛鳥川上坐臼滝比売命という古社が鎮座している。滝壺には渦ができやすいが、この神社の臼はホトのことである。人類の源泉である。生命力である。

 真言密教の胎蔵界曼荼羅

 アンモナイト          天の川銀河         カルマン渦         曼荼羅



3.古代の渦巻紋


 縄文土器                     冨嶽三十六景


 銅鐸の渦巻  土器の渦巻  邪視との見方がある。



 秋田県 大湯環状列石      英国 ストーンヘッジ   秋田県 深渡遺跡


平城宮の井戸跡 隼人の楯     築遺跡の弧帯石 メビウスの輪?  美内すずえ アマテラス



4.渦巻の意味
 デカルトの渦動説 空間は物質で満たされているということから、天体の動きを渦としてとらえる。『哲学原理』
 カント 物質の普遍的分散状態において、多様な物質の異なる引力と斥力が働きあう結果、円運動が起こって宇宙全体の体制ができる。『天界の一般自然史と理論』

  宇宙誕生の謎は真空のエネルギーの働きで、インフレーションが起こり、ビグバンにつながったこと、現在の宇宙の加速膨張についても、残っている真空のエネルギーがダークエネルギーとして宇宙の斥力を司っており、デカルト・カントの言葉は予言的に聞こえる。

 縄文土器の代表芸術品が所謂火炎土器と言われるものである。確かに火炎が燃え上がっているような造形に見えるが、火炎よりは岩に砕け散る大波の姿に見える。葛飾北斎の描いた冨嶽三十六景の神奈川沖浪裏の波を縄文人も見ていたのである。

 渦巻には呪術的意味があるはずであり、縄文人は何を祈ったのであろうか。小さい渦は小さい神々であり、大きい渦は大きい神々であるのか。

 エントロピーの増大と言う概念がある。
 統計学や情報理論では情報は手を加えなければ、乱雑さやあいまいさが増加することを示し、熱力学では、熱水と冷水を一つの瓶に入れると中くらいの温度になるが、中くらいの温度の湯は、自然には熱水と冷水に分れない。ヒートポンプが要る。覆水盆に返らずである。
  上流から水が流れてくる。水の流れの中に渦ができることがある。全体にはエントロピーが増大しながら流れているのだが局所的に渦ができ、そこだけエントロピーが減少するように見える。
 基本的にはエントロピーを減少させるのもの、すなわち秩序の回復は、生命の活動である。
  宇宙を漂う塵などが集まって恒星や惑星が形成されることは秩序の回復であり、エントロピーの減少である。自然の中の渦、これは生命と同じ働きをする。即ち渦は生命を持っているのである。

 渦、渦巻、螺旋は生命力の謳歌である。
 渦は蛇のトグロ、不死の象徴、神が坐す神奈備山の象徴である。
 渦巻は神の坐す宇宙であり、人がなす渦巻は神の降臨を促す。

参考文献
『うずまきは語る』千田稔  『あきつしま大和の国』大谷幸市


神奈備にようこそ

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